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正体不明の何者からに、有無をも言わせず攫われた大切な人たちを、素人離れした手際と実行力にて追って来た一同。捜し当てた別荘には、確かにルフィとカイの匂いの帯が見えたため、よ〜し、じゃあここからは俺の出番だと、るふぃくんが思いついたのが、
「だって、似てるから間違えたんならサ。」
それへとこっちからも便乗してやろうという作戦であり。問題の家の間取り、庭の植木の配置などは、サンジェストさんが衛星軌道上から高感度カメラで撮影されたという、いくらネット経由でどんな情報でも入手できる昨今だって言ったってそれはまだ無理だろう、とんでもない写真で(まったくだ)、今現在の様子というものを割り出してくれて。それを見て、屋内にどのくらいの人員が、どこら辺へ固まって潜んでいるのかを解析し。そこから…犯人一味をおびき出す経路と、突入の経路とを打ち合わせ。そして、これもサンジェストさんが、宅配ピザ屋さんのデリバリーバイクで持ってくるようにと指示した、隣りのにぎやかな街に大きな店を構えているアウトレット・ブティック、つまりは“衣料品店の”店長さんから受け取ったのが、
――― 水色のパーカータイプの半袖シャツに、濃紺の七分パンツ。
袖のところには、人気のヒップホップユニットの缶バッヂ。
端のほつれ止めにと青いテープを使ってある靴紐を通した、
真っ白なコンバース、という、
今日のルフィが着ていたのとまったく同じ服装で。それへと着替えた“るふぃ”くんが、そろりと近づき、錆び付いていたフェンスの隙間から何とか潜り込んだ連中の塒アジトの庭先で。小さく丸めたバスタオルを懐ろへと抱えての、わざとらしい“演技”をして見せたまでのこと。ここまで瓜二つの男の子が、しかもご近所にいるという事実を全く知らなかった彼らだっただろうから、すわ、人質が逃げ出した…と浮足立ったに違いなく。
「本物…だと思ってるルフィのことを指して“いや待てやっぱり手元にいるぞ”なんて確かめたとしたって、なんでこんなことがって混乱させる効果は十分にあるだろうしね。それに、どっちにしたって疚しいことをやってる連中なんだから、そんな鼻先へ攫った子にそっくりな誰ぞがわざわざ現れるなんて、お前らのやったこと、知ってるぞって煽るみたいなもんじゃない。」
カードについてた匂いと誘拐犯の匂いが同じ。とゆことは、あのカードを取り戻したいのかあるいは、電話の内容を聞いてたなというどちらかを警戒した一味による誘拐だという線が濃厚。会話を聞かれたのが困るのなら、誘拐したこと自体が不自然で。物騒な言いようだがその場で口封じと運ぶはず。(若しくは遠回しの脅迫とか。)となると、あのカードを取り返したい一味…という可能性の方が、比重も大きかろうから、あのね? 攫って来ちゃった るふぃ(実はルフィだったけど)が、そのカードを持ってないなら次はどうするか。
「どうしてもカードが欲しいんなら、お家の誰かへも当たってみるんじゃないのかなって。そのための取引のために必要だからって、やっぱりルフィのこと、そうそう逃がす訳には行かないんじゃないかって思ったから。」
だから。ルフィ自身には用向きがない場合でも、じゃあもう用はないとは運ばないだろうと。そこまで筋立てをスルスルと構築しちゃった るふぃには、サンジェストさんやゾロのみならず、ご本人の義理の兄上…ということになっている、ご亭主の ぞろさんまでもが、一体何が“降りて”来てるものやらとぎょっとしたらしかったが、
『だって、韓流映画に確かこういうのがあったもの。』
あああ、そうでした。こちらの奥様、韓流ものに凝ってたんでした。(苦笑) 勿論のこと、それだけではなく。一応の手筈でサンジェストさんが取り寄せた“資料”にて、ルフィやカイくんの居場所を解析した彼らだったけれど。こちらの小さな奥方にしてみりゃ、人間なんぞのずんと退化した鼻なぞ比較にならない嗅覚で、とっくに…どこにいるのか、どんな状態なのかも手に取るように把握済み。ルフィとカイくんを一緒にして、少ない見張りだけを付けてあるという状態へ置いており。つまりは、少々目を離しているようだったから。この機を逃す手はないと、思い切って賭けてみたお母さんだったそうであり。
「怪しい奴だと、すぐさま捕まえろって追って来る方へ、頭数も多く割かれるだろうから。そうなれば突入もしやすくなるだろと思って。」
そこへ加えて、
「偽物だってのに あの食いつきは驚いたよぉ。」
喉から手が出そうなほど、連中が欲しかったはずのあのカード…のレプリカも、サンジェストさんは用意して下さって。それをちらつかせたら、あっと言う間に食いついて来たから、ものすごい御利益で。
「怖くなかったのかい?」
いくら“替え玉大作戦”を思いついたのみならず“替え玉”を担当出来る唯一のご本人であれ、相手は複数の、しかも力ずくでの無体を衒いなくこなせる輩たち。中身は実はすっかり大人なルフィと違い、見たままのまだまだ幼い雰囲気をした こちらのるふぃくんには、連中の鼻面を引き回すという相当に危険な“囮”なんてことをさせる、言わば“特攻大作戦”でもあったりしたので。いくら“ルフィ可愛や”がいつだって最優先されているゾロやサンジェストお母様でも(こらこら)、そこまでの無理をこんな坊やへ課すのはどうかと感じたらしかったものの、
「ぜ〜んぜん♪」
そこはそれ、今時の向こう見ず、怖いもの知らずを装って、細い二の腕を顔近くまで挙げて、そんなに出っ張らない力こぶを押さえる真似なんかして見せた るふぃだったりしたのだけれど。
“ただの向こう見ず、じゃあないものな。”
るふぃにしても、勿論のぞろにしても。自分の身なんてどうでもいいと。そんなことより…まだまだ幼いのに攫われてしまった大事な坊やを、何がなんでも取り戻したいという強い切望があってこその無謀だったので。えへへぇなんて笑ってる今回のナンバーワン功労者である奥方を、その薄い肩へと腕を回すようにして引き寄せたご亭主。な〜に?と見上げて来た愛らしい笑顔へ、人目がなかったならキスの雨を山ほど降らせたかったに違いない。
◇
結構な数の追っ手がかかったのを察して、さあ鬼ごっこの始まりだと。懐ろに掻い込んだ白いタオルを殊更大事そうにぎゅっと抱え込み、素早く背を向け、駆け出して。この庭の象徴の樹でもあったものか、中央にそびえる、庭木にしては立派な銀杏を目指し、それをぐるりと取り囲んでいた茂みへと分け入る。もともとは単なる縁飾り程度のそれだったのだろうに、こちらもまた手入れの手が入らなくなってどのくらいが経つものやら。伸びるに任せた細かい枝が、小柄な るふぃの腰あたりまで育っており。
「おおっと。」
しかも、その茂みを無理から押し分けて通過した先は、何年分の落葉の堆積か、銀杏のそれだろう枯れ葉が結構な厚さの層を成す、足元不安な樹下へと続く。
「待ちやがれっ!」
出遅れた追っ手の側にも、大柄だったり力持ちだったりといったアドバンテージはあったから。ややこしいルートを逃げたお陰様、進度がたちまち遅れ出した標的の小さな背中へ、案外とすぐにも追いつけそうな予断のようなもの、相手に与えるのは簡単で。
「観念しなっ!」
体つきが大きい分、茂みの隙間を通過するのは結構抵抗が強かったものの、そんなもん強引に突破せよと、足腰へのより強力な馬力をかけた面々が、前方の標的から、多少なりとも注意を逸らしたのは、已やむを得ず。もしかしてそれも作戦の内だったなら、るふぃくんたら今回はまたなんて頭の回転が素晴らしい…というよりも、
“さては、昔のどこかで、こういう悪戯をさんざんしていたな?”
何たってお茶目なシェルティくんだってだけじゃあない。見栄えがそりゃあ愛らしく、しかも人気の犬種でもあったから。ミホークさんのところへお父さんと落ち着くまでの放浪生活の中では、身勝手な人間から売買目的で攫われかかったことだって幾度となくあったことだろう。それを躱す術とやら、まだ覚えていた るふぃだったらしくって。
“よしっ!”
時々 濡れた落ち葉の重なりに足を取られて滑りそうになりかかりつつも、ざくざくと進んで進んで。やっとこ辿り着いた銀杏の大木の後ろへ、大慌てという体で回り込む。まだ少し、追っ手からは間があったから、
“大丈夫。うまく行く。”
さあ、今度は反対側の茂みを掻き分けて外へと出るぞと、姿勢をより低めての進軍開始。ああ、すぐ真後ろに追っ手の気配が近づいてるな。でもね、あのね。どこまでついて来れるかな? だってさ、
「………ああ"?」
不意に。妙な声を上げた奴がいて。
「どうしたよ。」
「いや。これ…。」
ざかざか、やっぱり茂みの後半分の半径へと、るふぃの後をついて行きかかってた追っ手の一人が、怪訝そうな顔になってその手へ摘まみ上げたのは、
「…タオルじゃねぇか。」
しかも新品の純白が眩しいくらい。こんな廃屋の庭に何でそんなものが?というのも奇っ怪だったし、それからもう一つ。真夏の緑にはそりゃあよく映えて際立っていた白。今の今まで、ここにそんなものは見えたりしなかったのにと思うと、何だか急に…背中にかいた汗がひんやりして来たクチもいて。
「何か…怪談とかがある屋敷じゃねぇんでしょうねぇ?」
「馬鹿馬鹿しいっ!」
大方どっかから飛んで来たんだよっと、忌々しげに相手から取り上げてバサッと手近なところへ叩きつけたのは、そういう曖昧なものは信じてない、現実主義者なお兄さんらしかったが、
「………お。」
図体デカいのに下っだらねぇもんにビビってんじゃねぇと、先頭を変わったその矢先、ちょうど鼻先へコロンと転がっていたものに気がついて、やはりやはりその足が止まる。
「兄貴?」
「どうしたんで……うわぁっ!」
後へと続いていた面々が先頭の停止にこちらも同じく立ち止まることを余儀なくされて。先程、気の小さいことを罵倒されたデカぶつが、凍りついたようになって立ち止まっている兄貴分に気がついて。どうされましたか?と後ろから、肩越しに前方を見やったところが。
「なっ、なななな、なんですか、そりゃあっ!」
こういう茂みは言わば、毛足の堅すぎるブラシのようなものでもあって。しっかりと固定されていないものは、強引な通過の際には、その身からもぎ取られてしまう恐れも大いにある。何かから引きはがされた慰留物が、それが通って行った足跡のように点々々と、子供が作ったオブジェみたいに中空に浮かんで居残っていたのが望めた訳だが。
「スニーカーに靴下に、パーカーに…半ズボンも? あ…あっちの方にあんの、トランクスじゃありませんか?」
「わ…判ってるっ!」
点々々と。あえて明るい例えを持ち出すならば、酔っ払ったお父さんが玄関から1つずつ脱いでった跡みたいに、足元から順番に残された衣料品の数々は、間違いなく…先程見かけて彼らが追ってた男の子が着ていたものであり。上着はまあ、枝に引っ張られたんで焦って脱いだという可能性もあるかもだけれど。
「靴やズボンや下着を、何でまた…。」
しかも、これがもっと大きな問題で。
「坊主の姿が有りやせんぜ。」
こっちの陣営の注意が逸れたとしても一瞬かそこら。茂みの抵抗さえなければ、伸ばした腕がひょいと届きそうな近場まで迫っていたのだからして。これだけの衣服を剥がされ剥がされ逃げてった男の子、見失う筈はないっていうのに。銀杏の樹のたわわな葉をつけた梢の傘の縁の向こう。明るい日差しが乾いた色合いに染め抜いている芝草の上には、坊やの陰ひとつ落ちてはいない。広い庭だから、向こうの物陰へまでは相当に距離があるっていうのに…どこにもだ。
「ねぇ、兄貴。」
「なんだ。」
「霊には、死んだ人間のだけじゃあない、
無念のうちにいる生きてる人間の霊も、飛び回ることがあるって言いますぜ?」
「…何が言いたい。」
*筆者のズボラから随分と長引いてしまいましたが、
このお話の舞台は、八月に入ったばかりの盛夏の箱根奥向きです。
正に“キツネに摘ままれたような”現象に引きずり回された格好の、追っ手の皆様が呆然としている間にも、茂みへ飛び込みながら、そのままわんこへとメタモルフォーゼした るふぃだってこと。皆様にはもうお判りのことだろう。身軽なわんこが、たったかと茂みから飛び出して来たのを、そちらの棟で人質の見張りを担当していた二人ほど、
「あれ? なんであんな犬が紛れ込んでんだ?」
「犬?」
きょとんとしていたところへと、
「てめぇらっ、覚悟しなっ!」
頭に血の昇った男衆三人が、赤外線感知スキャナーで割り出した、母屋の南の端っこのお部屋へと殺到。居残っていた数人をあっさりこんと薙ぎ倒し、彼らが守っていたドアを、南京錠ごと蹴り飛ばす。部屋の中ほどでは…外での騒ぎが聞こえていたか、ますます身を堅くして、小さな仔犬を抱き締めていたルフィが立ち尽くしていたが、
「…っ! ゾロっ、サンジっ!!」
「ルフィっ!」
「無事だったかっ!」
結構 気張っていたはずが、頼もしい人たちの姿を見た途端、自分が頑張らなきゃいけないというつっかい棒みたいな気持ちの張りが、あっと言う間にほどけたらしくて。
「怖かったよぅ〜〜〜。」
今にも泣き出しそうな声になり、お兄さんたち二人へ両腕伸ばして、二人共へとぎゅむぅっと抱きつく。そんなルフィのお膝から自分でぴょいっと飛び降りた小さな毛玉。真っ白いテリア、ウェスティのカイくんもまた、こちらさんには匂いで 随分と前から気配が見えてた大好きな人へと向けて、お廊下をまっしぐらして行って。
「カイっ!」
あわわ、通り過ぎるとこでした。加速が止まらず随分と行き過ぎてしまった大きめの窓から、大好きなパパがシェルティにメタモルフォゼしてたママを小脇に抱えて登場したのへと、
「あうっあうっvv」
ゴムまりみたいに飛びついて、何だか妙なご対面の図になってたらしいですが、それはともかく。(笑)
◇
とんだ捕らわれの身となってしまってたお二人は、一気に緊張が萎えた弾み、ふにゃりと力が抜けちゃったまま、それぞれの家族とともに駆けつけるのに使ったボックスカーへと収容されて、さて。
『あいつらはどうしてやろうかね。』
すたこらさと逃げて来たものの、こっちには疚しいところなど微塵もない。
『警察への通報は?』
『さてそこだ。』
こらこら、どこだって?(苦笑) るふぃがるうくんになることでまんまと煙に撒いた顔触れを叩き起こしてでもいるものか、こっちを追って来る気配はなかなかしなかったものの、
『向こうだって馬鹿じゃなかろう。人質を逃がしたことで今日のところは見切りを付けて、ここから撤退してしまや、俺らが事実を並べて警察が奴らを突き止めたところで、誘拐?何の話ですかと惚けるって手もあるからな。』
略取や監禁の証拠も、本人証言だけではちと弱い。まま、今すぐの通報をすれば、連中がいるうちに駆けつけたお巡りさんたちへ何人かでも捕まえさせることは可能だろうが、
『またぞろ、襲撃を受けるなんてのは、向かっ腹が立たないか?』
向こうは るふぃのお家を知っている訳だからね。後から別の顔触れが再襲撃ってことだって運べよう。
『…という訳で。もう1段ほど踏み込まさせていただきましょうかね。』
ふっふっふ…っ、と。妙に意味深な笑い方をしていたサンジェストさんが、ぴらりときれいな指先へ摘まみ出したのは、正真正銘こっちこそが本物のあの白いカードキー。ACアダプターのような、黒い箱のような形の機械をグローブボックスから取り出すと、脇にあったスリットへ、そのカードを通して見せる。機械は搭載してあったPCへと接続されていたらしく、ナビ用のモニターには、既に何かしらのプログラムが立ち上げられてあったその画面が映し出されており、
『さぁて、何がヒット致しますかな?』
中の情報、そういえばまだ確認してはいなかったからと。今になって解析プログラムへとかけてみた彼であり、画面に現れたのは何行にも渡るアルファベットの羅列とそれから、
『…お。』
んぱっと。形式が違うファイルが収録されておりますという表示。それを展開してみたところが………。
エピローグ
たった数日だったのにね。何だか大変だったし、凄く楽しかったねと。一番大変だった人間が、うふふvvなんて笑ってる。箱根で過ごした10日ほどの夏休みは、その前半がとんでもない誘拐騒ぎでわたつかされてしまい、残りの半分は…名残り惜しかったものの早々に東京へと戻ってしまった彼らであり。旦那様のゾロの方は、秋冬の一大イベントへ向けてのあれやこれや、本格始動に向けてのお仕事が始まりもするのだそうで。はたまた、ルフィの方はといえば、コーチを務めてる少年サッカーチームが、地区予選に引き続き、都大会をも突破したとのことで、
「お盆の前後だったかに、全国大会もあるんだって。」
俺はいわば非常勤のコーチだからサ、遠征や大会にまでは付き合わないしで、大会がそこまで進んでただなんて知らなかったんだよね、なんて。ある意味では結構お呑気な言いようをして笑っていたりし。ああ、そうそう。例のカードに入ってたデータの内容でしたね。
『こりゃあ凄いぞ。
某警備会社の金融関係企業との契約リストと、
現金輸送車に装備されてる警備システムへの暗証コードの一覧だ。』
そんな中身だってことが判ったもんだから。となれば…取るべき道は1つだけと、にんまり笑ったサンジェスト氏が取った手は、
「落とし物を拾いました…は、なかったよねぇ♪」
しかも、そこいらの警察へではなく、何とテレビ局へというから、サンジェストさんってば何だか発想が物凄い。ちょいと蓮っぱな変装をして“観光客デ〜ス”と化けてから、とある人気スターの熱愛バカンスのショットを撮ったからと売り込んで。どういうコネからだか、確かに…熱愛の噂が立ち始めたばかりのタレントさんのデートの隠し撮りとやら、ディスクへと入れてあったのを、新しい特ダネをガンガン放送しているワイドショーの担当者へと確認させて売り渡し、
【さあてこれが、○○○くんの深夜の熱愛デートの激写ショットで〜すvv】
パッと切り替わった画面へ出たのが…例のカードに入っていたデータだったりしたものだから。ずらりずらずら、金融関係の名前の連なる一覧表には、スタジオ騒然。夏休み中でネタが少なかった時期だったのも手伝って、大慌てで内容の解析が進められ、事態は非常に短期間の内に、隠しようのない格好にてその収拾までを報じられることとなってしまったそうであり。
「警備会社の機密の入ったカードです、たまたま拾ったのですが…なんて持ってっても、物が物だから内々に済まされるのがオチだろし。」
公開しにくい内容だという気持ちは判るが、それでは…情報が漏れたって事態はどうケアされるのだか、判ったもんじゃあないし。それに、
「るふぃんチにまたまた怪しい連中が押し込んじゃあ怖いものね。」
あの当日の実行犯たちはしっかりと逮捕されていたし、住居不法侵入に加えて、彼らが使っていた車から、縁もゆかりもない筈な るふぃやカイくんの乗ってた痕跡が出たことから、略取行為のほうでも立件できそうとのこと。そして、こちらの事実の暴露とあってはね。本当の黒幕さんだとて、これじゃあ問題のカードを取り返す意味ももうないと、しっかりすっぱり判ったことだろうしね。
「もうちょっと、るうちゃんたちと遊びたかったけどもな。」
略取事件のほうで万が一、取材とか何とか駆けつけては…表立っての顔や名前が出ては難儀な人が約一名ほどいたもんだからと。彼を本国へ旅立たせる飛行機を見送るついで、ロロノアさんチのお二人も、早めに夏休みを切り上げることとなってしまって。後から連絡を入れたらば、そちらではもう、何事もなかったかのように静かなばかりの毎日が戻って来ているそうだとか。
「カイくんがまた、サンジとバイバイするの、嫌がってグズってたしねぇ。」
珍しくも男の人へと懐いたカイくんは、見ている周囲が貰い泣きしちゃうほど、おいおいと泣いて別れを惜しんでいたもんで。
「サンジのほうも気にしてたからね。」
もしかしたら、今度は向こうへ直接遊びに行ったりしてサ。そういうこともあるかもな、ほれ、ベルちゃんの弟みたいな年頃だし。くすすと語り合うは、次の“明日”への楽しい話題。あれほどドキドキしたのにね。普通一般のかたがたには、そうそう体験できるもんじゃあない大事件だったってのにね。もう、そんなことへと眸が向いてる彼らであったりし。やっとのことで夏めき出した都会の浅い青空に、どこからか風鈴の音がして。忙しい夏をさあ乗り切ろうねと、楽しげな声を上げ、じゃれ合ってた二人だったそうですよ?
〜Fine〜 06.8.07.〜06.11.20.
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*うわぁ〜い、やっと終わりました、夏休みのお話が。(う〜んう〜ん)
何でだか筆の進みが悪かった夏でして、
ややこしいコラボにしたから手間取ったのかなぁ?
ずれ込んだ話は他にも山ほどある体たらく…。
ががが、頑張りますんで、どかお待ちを〜。(苦笑)
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